
Sharjah Research, Technology and Innovation Parkは、産学および政府の連携に基づきイノベーションを支援するエコシステムを開発し、その活動によって高いポテンシャルを持つスタートアップを創出することを目的に2016年AUS Enterprisesによって設立されました。
2021年に開設された本社は、25,000m2以上の敷地面積を誇り、レンタル可能なコワーキングスペースとAUS Enterprisesの常設オフィスが設けられた2つの巨大なビルに面した2つの印象的なアトリウムで構成されています。スタートアップやインキュベーター向けにデザインされたリース可能な空間には、ワークステーションやミーティングルーム、多目的室や展示スペース、講堂やジム、託児所が設けられています。


さまざまな空間が生み出されている2つのアトリウムの上には、荘厳なドームが鎮座しています。異なる高さに内側から金属グリッドが配された全長18mのこの巨大なドームは、空間を行き交う人々に動いていると錯覚させます。さらにどちらのアトリウムにも自然と自然に存在する形状とつながりのあるテーマが見事に反映されており、ポジティブな癒し体験を提供する独自のバイオフィリックデザインが採用されています。
“クラウドアトリウム”で目を引くのは、30mの高さから吊るされた1トン近くの重さがある2つの巨大な作品。いずれもパラメトリックモデルを使用して伸縮性のあるファブリックで作られており、片方のフォルムは雲から、もう片方のフォルムは“ファラジ”の流れるようなラインから着想を得ています。“ファラジ”は5000年前シャールジャで使用されていた灌漑システムで、当時の人々の耕作を助け、砂漠の中で生き残る命綱でした。
この灌漑システムの形状はビル全体のインテリアに影響しており、この灌漑システムを想起させる要素がビル内に多数散りばめられています。
芝生が敷かれ植物が植えられた“グリーンアトリウム”の中心にも“ファラジ”システムから着想を得た木製のアイランドが配置されています。さらに、各フロアがこのビルの一部であることを印象付けるアトリウムに面した54,000mの金網の有機的なシルエットもまた、古代の灌漑システムを想起させます。




インテリアデザインを選択するにあたり、デザイン全体にインスピレーションを与えているソフトで有機的なシルエットを残しつつ、さまざまな要素が含まれた色々な表情を見せるカメレオンのような個性を持つ空間を生み出すため、デザイナーはいくつかの家具メーカーと協力してデザインを厳選しました。


カジュアルなスタイルから着想を得たコワーキングエリアは、ニュートラルな色を取り入れた広々としたオープンスペースで、防音の壁でワークステーションとよりカジュアルなラウンジスペースに分けられています。このエリアには、人造大理石のフロア、温かみのある色味の木材、磨き上げられたコンクリートが使用されています。多くのワークステーションに、Arperのニュートラルなカラーの“Duna 02”が選ばれ、多くのゲストに対応できるよう複数台が導入されています。
カジュアルな雰囲気に仕上げられたこういったエリアでは、ミーティングルームも共用スペースとして機能することが想定されており、さまざまなサイズのワーキンググループが集まる場所となっています。活発に議論を交わすこのような空間では、家具も明るくコントラストが魅力的なカラーのものが選ばれています。Arperの鮮やかな赤が印象的なアームチェア“Arcos”は長いワークテーブルを囲うように配置されており、中央のラウンジエリアには“Cila”チェアを配置することで空間にエレクトリックブルーのアクセントがプラスされています。


対照的にAUS Enterprises本社のオフィスは、広々とした高級感のあるオフィスとよりフォーマルでプライベート感のあるミーティングルームが配置された落ち着いた雰囲気のエレガントで洗練された空間となっており、頑強な企業界との架け橋を生み出す場所として機能しています。このエレガントな空間には、デザイン言語を共有する上質な被覆材、ラミネート加工が施されたガラスのパーティション、ブロンズのアクセントが取り入れられたウッドパネルが採用されています。本当に上質なチェアが求められる空間だからこそ、この空間にはミディアムまたはハイバック仕様のArperの“Catifa Sensit”が選ばれています。


このプロジェクトにおいて、アトリウムは人々が行き交うだけの象徴的な価値を持つエリアではなく、本格的な多目的スペースとして作られています。事実このアトリウムには、共有ワークスペースがあり、休息をとれるリラクゼーションエリアがあり、人々が集まれる長いテーブルが配置されたアイランドがあり、カジュアルな時間を過ごせる布張りのチェアが並べられたコーナーがあります。そしてArperの“Pix”オットマンのカラーとソフトな印象により、こういったさまざまなエリアでカジュアルな空間としての一面が見事に引き出されています。







Credits
建築家: ROAR
写真: The Oculis Project
製品: Arcos, Catifa Sensit, Cila, Colina, Dizzie, Duna 02, Pix, Steeve